Nasic Release ナジックリリース | 教育界における注目テーマごとに、各界の有識者の方々のご意見・ご提言を掲載した提言誌

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ナジックリリース第25号<BR>(2014年9月1日発行)

特集:「キャンパス進化論」

 

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就業力育成・キャリア教育

豊かな社会の実現を担う思いやりのある人材の養成を目指す (広島大学 学長 浅原利正)

学長
浅原利正
Toshimasa Asahara

広島大学は1998年、国立大学として初めて、現在のキャリアセンターの前身である学生就職センターを設立。
以来、大学を挙げて学生の就職・キャリア支援に注力してきた。
「ナショナル&リージョナルセンターとしての総合研究大学」という長期ビジョンの下、今後どのような人材育成を目指すのか。浅原利正学長にお考えを伺った。


 

果敢にチャレンジし課題を克服していく力を育成する

――広島大学は2009年に第二期中期目標・中期計画を策定し、10〜15年後を見据えた長期ビジョンを発表しました。具体的にどのような大学像を目指しているのでしょうか。

浅原学長(以下、敬称略)広島大学には11学部12研究科がありますが、このうち学士課程教育については10年後も大きく変わることはないと思います。

私が学士課程教育において特に重視しているのは、総合大学としての環境を生かした「教養教育」の充実です。将来、専門分野で活躍できる人材を育てるためには、その人間的基盤を養うためにも、教養教育をきちんと行う必要があるからです。

その一方で、専門教育を行う大学院の研究科では、社会の環境変化に対応する必要があります。例えば、環境分野の研究は、21世紀の地球・人類にとって大きな課題です。

こうした分野で、本学として何を重点的な研究テーマとするかについては、今後10年の間に変化することも考えられます。

この先予想される少子高齢化や、グローバル化などの要素を勘案しながら、大学の在り方を検討し、教育研究を展開していきたいと考えています。

――そうした基本方針の下で、広島大学としては、どのような人材の育成を目指しているのでしょうか。

浅原 学生も社会に出れば、様々な課題に直面することになります。だからこそ、学生には大学4年間で、多様なことに挑戦してもらいたい。

失敗を繰り返しながら、課題や困難を克服できる人間を育てたいのです。さらに言えば「相手のことを思いやる人間」を育てるべきだと、私は考えています。

戦後、日本が発展していく過程では、競争は確かに必要だったかもしれません。しかし、競争原理は人と人との繋がりを希薄にしていくところがあります。

社会がある程度成熟した今、新しい価値観の下で、より多くの人々にとって住みよい社会をつくる時期に来ているのではないでしょうか。そのキーワードとは「寛容」であり、相手に対する思いやりがなければ、本当に安定した豊かな社会を実現することはできないと思うのです。

入学直後からキャリアデザインを強力にサポート

――学長のお考えのような人材を育成するために、広島大学ではどのような就職・キャリア支援を行っているのでしょうか。

浅原 現在、本学のキャリアセンターでは、各部局と連携して学生のキャリアデザインを支援しています。これは「低年次生からのキャリア支援」と「卒業(修了)前年次生からのキャリア支援」の二本立てになっています。

なぜ二本立てかというと、卒業前年次に就職活動の準備を始めるのでは遅すぎるからです。

学生の中には「なんとなく大学に入ってきた」という人も少なくありません。こうした学生が、いざ3、4年になって卒業後の進路を決めようとしても、間に合わないのが実情です。

自分は将来どんな社会人になりたいのか、そのためには何を勉強すべきなのか、入学時点で考える機会があれば、大学生活を通してキャリアデザインを描き、目標に向かって集中して学問に挑むことができます。

このため本学では、新入生オリエンテーションや教養ゼミでキャリアガイダンスを行い、キャリアデザインをテーマにした教育科目を開講しています。さらに、大学院生を対象とするキャリア教育科目も新設するなど、様々な取り組みを行っています。

学生が主体的に取り組む提案型プロジェクト「フロントランナープログラム」

――低年次生からのキャリア支援の一つとして、広島大学では「フロントランナープログラム」に注力しておられます。この取り組みについて教えてください。

浅原 フロントランナープログラムは06年度から文部科学省の現代的教育ニーズ取組支援プログラム(現代GP)によりスタートしました。これは、学生が主体的に提案したプロジェクトの計画・実行を大学が支援する、いわばPBL(Project Based Learning)型プログラムです。

ここでは、学生がチームとなって社会に出て、地域と連携しながら自らの計画を実現していきます。私も報告会に出て大変感動したのですが、これまでにも、無人島への植樹、酒蔵通りの活性化、映画祭の実施、国際交流のためのフットサルリーグ設立など、多種多様な興味深い取り組みが実行されてきました。

プロジェクトを進める過程では、必ず計画通りにいかず苦労します。立ちはだかる障害をどうしたら乗り越えることができるのか、学生たちはプログラムを通じて学んでいきます。

そのプロセス自体が、学生たちにとって得がたい貴重な経験となっています。文部科学省の現代GPは09年に終了しましたが、今後もこのプログラムを本学のキャリア教育の一環として定着させたいと考えています。

就業経験の提供と経済的支援を目的とした「フェニックス・アシスタント」

浅原 2010年度から、学生が図書館の窓口業務などの大学運営業務に携わる「フェニックス・アシスタント制度」をスタートさせました。

この制度は、学生に学内で働いてもらうことで、就業経験の提供と経済的支援を同時に行うことを目的としています。窓口業務などを通じて、自分が学生を迎える立場になれば、学生自身の意識も大きく変わってくるでしょう。

学内のアルバイトは一般のアルバイトと違い、私たち教職員の目が届くので、少々失敗してもサポートしやすいというメリットもあります。学内で「働く」ということを経験し、大いに失敗してほしい。失敗したことは必ず身に付きます。

この制度が、失敗を恐れず、失敗に耐えられる人材の育成に繋がると期待しています。

――現在、文部科学省は大学に対して、実践的なキャリア教育や職業教育の強化を求めています。その点について、広島大学としては、今後どのように取り組んでいかれるのでしょうか。

浅原 今、大学教育に求められている実践的な力とは「卒業後すぐに職場で実務をこなせる」ということでは必ずしもないと考えています。

実践的教育の必要性は理解できますが、まず、自分自身が主体的に仕事に取り組み、むしろ5年後、10年後に職場や社会で大きな貢献ができる、そのようなトータルな力が求められているのではないでしょうか。

こうした力を養うためには、視点を広く持つこと、企業や地域に役に立ち、貢献するためには、社会でどういう役割を果たすべきなのかを理解することが重要です。
そのうえで、文章力や語学力、技術力などのスキルが生かせるのであれば、社会人としての評価も極めて高いものになるのではないでしょうか。

日本の文化を理解し国際社会で活躍できるグローバル人材を育成

――社会からは、具体的なスキル習得を目的とする教育の充実も求められているかと思います。この点については、どのような取り組みを行っているのでしょうか。

浅原 まず、語学力については、グローバル化への対応という点からも重視しています。新たに教員も採用し、学生の語学力向上のための取り組みを進めているところです。

しかし、外国語の習得はあくまでもツールであって、それだけでは不十分です。国際社会で活躍できるグローバルな人材を養成するためには、日本独自の社会システムや文化・芸術に対する理解を深めることが必要です。

本学の学生には、日本の良さや文化を理解したうえで、国際社会に雄飛する人材に育ってほしいと思っています。

――広島大学で培われる学生のアイデンティティーとはどのようなものでしょうか。

浅原 大学4年間は、人生全体から見ればわずかな期間かもしれません。しかし、この時期に何を学び、どんな人と交わったかということが、その後の人生に大きな影響を与えるのも事実です。

広島大学は総合大学であり、多様な分野の教育・研究を推進していますが、その利点を生かし切れていない面もあります。

幸い、教育学部や総合科学部では、文系と理系の学生が交流しながら学べる環境が形成されつつあります。

その意味でも、今後は総合大学としての利点を最大限生かす教育研究を展開し、それを広島大学のアイデンティティーとして育てていきたい。それが「ナショナル&リージョナルセンター」としての広島大学を実現することになるのです。

 

浅原利正(あさはら としまさ)

 

1946年生まれ。71年広島大学医学部医学科卒業84年医学博士号取得(広島大学)。広島大学医学部講師、助教授を経て、99年同大医学部教授に就任。

2002〜04年同大大学院医歯薬学総合研究科教授、04〜07年同大学病院病院長・教授などを歴任し、07年5月より現職。

大学改革提言誌「Nasic Release」第22号
記事の内容は第22号(2011年5月1日発行)を抜粋したものです。

 

ナジックリリース第22号・記事一覧

未来を見据え希望を持って人生を歩んでいくための力を育む (文部科学省 高等教育局 局長 磯田文雄)


日本経済の持続的発展には若年層の活力が不可欠 (経済産業省 経済産業政策局 産業人材政策室長 高橋直人)


「スマートで強靭なグローバル一橋」で世界ONLY ONEを目指す (一橋大学 学長 山内 進)


豊かな社会の実現を担う思いやりのある人材の養成を目指す (広島大学 学長 浅原利正)


全人教育を通じて複眼的視野を持った「世界市民」を養成する (関西学院大学 学長 井上琢智)


21世紀の日本の活路を拓く実践型イノベーション人材を育成する (芝浦工業大学 学長 柘植綾夫)


社会のために役立つ人材を建学の理念で養成する (明治学院大学 学長 大西晴樹)


地の利を最大限に活用し世界を舞台に活躍する人材を輩出する (学校法人青山学院 理事長 半田正夫)


新名古屋キャンパスは「第二の創学・建学」の第一歩 (愛知大学 学長・理事長 佐藤元彦)


レポート ナジックのロゴが京都・都大路を駆け抜けた 全国高等学校駅伝競走大会