Nasic Release ナジックリリース | 教育界における注目テーマごとに、各界の有識者の方々のご意見・ご提言を掲載した提言誌

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ナジックリリース第25号<BR>(2014年9月1日発行)

特集:「キャンパス進化論」

 

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ナジックの学校支援事業

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就業力育成・キャリア教育

全人教育を通じて複眼的視野を持った「世界市民」を養成する (関西学院大学 学長 井上琢智)

学長
井上琢智
Takutoshi Inoue

関西学院大学は、総合私立大学でトップクラスの就職決定率を誇る。
2010年度には文部科学省の「大学生の就業力育成支援事業」に「社会との接点から自己を磨き高める就業支援」が採択された。

ここでは、景気動向にかかわらず、就職決定率97.0%以上、就職率85.0%以上の目標達成が掲げられている。本年四月に就任した井上琢智新学長に、人を育てる教育と就業支援について伺った。


 

大学の4年間は生きるとは何かを考え、自分の強みを探す時期

──関西学院大学では、グローバル社会で活躍できる人づくりに向けて、様々な取り組みがなされています。学長が目指される大学像、教育研究の在り方についてお聞かせください。

井上学長(以下、敬称略)関西学院はキリスト教主義に基づく「全人教育」の下「世界を視野におさめ。

他者への思いやりと社会変革への気概を持ち、高い見識と倫理観を備えて自己を確立し、自らの大きな志をもって行動力を発揮する人」を育てることを目指しています。

全人教育とは、人間として生きる力を身に付ける教育なのです。学ぶことの大切さを知り、自らの価値観を養成し、それに従い行動を選択できるという能力を身に付けることを最重要視しています。

キャリア・就職支援の要となっているのが、各キャンパスに設置しているキャリアセンターです。ここでは、学生時代を「一人一人の強みづくり、強み探し」の時期と位置付けており、卒業後の進路を考えるに当たって、次の五つのステップを踏む必要があると考えています。

一つは人生観、職業観を持ち、自分の人生における働く意味を明確にする。次が、自分の長所と短所を知り、強みを生かす。

そして3番目で自分の人生を考えながら業界・業種を選択し4番目に企業を選ぶ。最後が、その企業風土が自分に合っているかを確認するといった流れです。

在学中に、社会の幅広い分野で活躍できる専門知識を身に付けることは大切です。しかし、それ以上に「生きる」とは何か、あるいは「働く」とは何かを根本的に問い直してほしい。それが「学ぶ」ということです。

自分の価値観を確立すると真の実力が身に付き、充実した人生を送ることができます。本学を卒業したある女性は、実務を経験しながら会計士試験を受けようと頑張ったけれども、不合格となったため、すぐに渡米して1年間英語を勉強しました。

その後、香港で日本の大手電気メーカーに勤め、財務に関する能力を生かし、世界のマーケットで活躍するまでになりました。そのままいけば順調にキャリアを積んでいたはずです。

しかし彼女は、そのメーカーを退職し、現在は、米国での永住権を取得するため、日本人が経営するカナダの農場で経理の仕事に携わっています。大学時代の4年間に、自分自身の人生観、職業観を形成することが、その人の人生設計に関わっていくという好例でしょう。

教員は、自分の専門分野を教えると同時に、学生一人一人と向き合うことが大切です。EDUCATIONの語源を考えると「能力を引き出す」という意味です。

教えるのではなく、本来持っている能力を自らが引き出すことを手伝う、これが教育の使命であり、私たちの最大の役割だと思っています。

入学から卒業まで真の人間力を高めるキャリア支援を実施

──関西学院大学は、全国屈指の就職内定率、就職率を誇っています。就業支援の在り方全般に関して、どのようにお考えでしょうか。

井上 真の実力を身に付けるには、主体的に学ばなければなりません。学ぶべきものの中身は、基礎力、専門知識と技能、教養の三つです。

これは土屋明生キャリアセンター長の言葉ですが「基礎力は専門の能力の礎となるもの」であり「専門知識と技能は誇れるもの」「教養は多様性を生かすためのもの」です。

関西学院大学では、正課、正課外、エクステンションの各プログラムの連動によるライフデザイン・プログラムに基づき、一年次から体系立ててキャリアを学ぶことができます。

低年次(一、二年次)では、正課プログラム「ライフデザイン科目群」で世界観、人生観、職業観を体系的に学び、自らの将来、生き方、在り方を考えていきます。

また、インターンシップや他大学との交流プログラムなどを通して、自分らしさや社会との関わりについて知り、他者とのコミュニケーションを実践することによって、自らの可能性を広げていきます。

就職活動年次(三、四年次)では、これまでの大学生活を通して培った、自らの強みや持ち味を発見・管理する「自己分析」に取り組みます。そして「業界・企業・仕事研究」で自分に合った働き方を明確にする。

この間、教職員は進路決定までのタイムリーなプログラムと、きめ細かな面談で学生を全学的にサポートします。エクステンションプログラムでは、将来の人生設計に必要な能力を習得するため、学業や課外活動と並行して学内で受講できる様々な講座を提供しています。

これらの講座は受講できる学年に制限を設けていませんので、低年次から計画的に受講していくことが可能です。

自己を確立し、大きな志を持って行動できる人間に

──関西学院大学では「複数分野専攻制」(MDS)をはじめ、学生の目標や興味に応じて、他学部の専門科目を自由に履修できるカリキュラムを構築しています。その意図を教えてください。

井上 本学は、各学部の英語の名称をSchoolと呼び、学部中心の運営が特徴となってきました。しかし一方で、学生に豊かな発想力・創造力を養ってもらうために、全学の協力体制も確立し充実させてきました。

学部間の垣根を低くし、他学部で開講している科目を履修できる枠を広く設定することで、学生一人一人が自分の夢を実現するチャンスが増えます。

例えば、商学部に所属しながら法学部のプログラムを履修し、法律に精通したビジネスマンを目指す学生がいます。また、MDSを利用して、4年間で二つの学部を卒業できる「ジョイント・ディグリー制度」を日本で初めて導入しました。

就職支援に関しても、同様の全学の協力体制の下、ライフデザイン・プログラムを学部横断的に構築しています。

創立120周年となった2009年度に、今後10年間で到達すべき目標を定めた「新基本構想」を策定しました。

ここでは、いかなる人間を育て、いかなる大学であろうとするかを明示しています。目指す人間像は「体現する世界市民」目指す大学像は「垣根なき学びと探究の共同体」です。

大学時代に高い識見と倫理観を備え、自己を確立したうえで大きな志を持って行動し社会に巣立ってほしい。

国内外で活躍する人間に育ってもらうために、多様な留学プログラムをはじめ「大学コンソーシアムひょうご神戸」主催の海外インターンシッププログラム、留学生向けの国内インターンシップ、国連ボランティア計画(UNV)との協定に基づいた開発途上国へのボランティア派遣などを行っています。

学部間の垣根を低くした教育を実施

──大学にキャリア教育・職業教育の充実が求められています。関西学院大学の「人を育てる教育」の方向性についてお聞かせください。

井上 私の専門は経済思想史ですが、アダム・スミスは『国富論』で「分業は生産性を高めるが、人間性を破壊する」と述べています。少なくとも本学は、人間らしい生き方ができる学生を育てたい。

最近では企業も人を人材として使い捨てるのではなく、人を人として扱うほうが、最終的には好ましい結果が得られると考え始めています。

それを前提に申し上げれば、例えば「新卒者雇用に関する政府の取組」では、新卒者雇用の定義を「三年以内既卒者」としています。この発想は、単位取得=卒業とみなし、まだ、自らのライフデザインを描けていなくても、卒業させてしまうということを前提にしています。

本学では、4年間たって単位を取得しても学び足りないと思ったら、自分の意思で大学に留まって勉強できる道を開いています。

経済学部の私のゼミに、文学部の学生がMDSを利用してきたことがあります。その学生は、歴史学を専攻していました。

おそらく、人生設計をするのに文学部で学ぶだけでは何か足りないものを感じ、経済学でも学ぼうとしたのでしょう。そのように、学部間の垣根を低くすることで、学生の知的好奇心を満たし、目的に応じた学習計画をバックアップしています。

学長就任に当たり、各方面から様々な質問をいただきます。私がいつも答えているのは、高等学校までの勉強が強制されたものだとすると、大学は主体的に学ぶ場であるということです。実学教育という言葉があります。

この本来の意味は、就職に直結する資格を取ることではなく、自然科学を含めた総合的な学び、まさにSciencesを学ぶべきであるという考え方です。

私自身、学生のある時期、一プラス一がなぜ二になるかを考え続けたことがありました。一見、無意味に思える問いかけですが、学生時代にはそのように根本的な問いに向き合ってほしい。
それがきっと、人間としての幅を広げることに繋がっていくはずです。

 

井上琢智(いのうえ たくとし)

 

1946年生まれ。関西学院大学大学院経済学研究科修士課程修了、同博士課程単位取得。関西学院大学経済学部助教授、同大経済学部教授、同大大学院経済学研究科博士課程指導教授、同大経済学部長、副学長、評価情報分析室長、学院史編纂室長を歴任し、2011年4月より現職。

大学改革提言誌「Nasic Release」第22号
記事の内容は第22号(2011年5月1日発行)を抜粋したものです。

 

ナジックリリース第22号・記事一覧

未来を見据え希望を持って人生を歩んでいくための力を育む (文部科学省 高等教育局 局長 磯田文雄)


日本経済の持続的発展には若年層の活力が不可欠 (経済産業省 経済産業政策局 産業人材政策室長 高橋直人)


「スマートで強靭なグローバル一橋」で世界ONLY ONEを目指す (一橋大学 学長 山内 進)


豊かな社会の実現を担う思いやりのある人材の養成を目指す (広島大学 学長 浅原利正)


全人教育を通じて複眼的視野を持った「世界市民」を養成する (関西学院大学 学長 井上琢智)


21世紀の日本の活路を拓く実践型イノベーション人材を育成する (芝浦工業大学 学長 柘植綾夫)


社会のために役立つ人材を建学の理念で養成する (明治学院大学 学長 大西晴樹)


地の利を最大限に活用し世界を舞台に活躍する人材を輩出する (学校法人青山学院 理事長 半田正夫)


新名古屋キャンパスは「第二の創学・建学」の第一歩 (愛知大学 学長・理事長 佐藤元彦)


レポート ナジックのロゴが京都・都大路を駆け抜けた 全国高等学校駅伝競走大会