Nasic Release ナジックリリース | 教育界における注目テーマごとに、各界の有識者の方々のご意見・ご提言を掲載した提言誌

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ナジックリリース第25号<BR>(2014年9月1日発行)

特集:「キャンパス進化論」

 

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国際化・グローバル戦略

「責任ある教育」の推進が地域と世界に貢献するマグネット・ユニバーシティを実現する (福岡大学 学長 衛藤卓也)

福岡大学長 衛藤卓也

今年、創立75周年を迎える福岡大学は、九学部31学科、大学院10研究科32専攻、学生数2万人超を有する総合大学である。福岡県のみならず九州を代表する拠点大学として、地域との連携やアジアとの交流にも積極的に取り組んでいる。衛藤卓也学長は、地域に愛され信頼される「マグネット・ユニバーシティ」構想を掲げている。新たな四半世紀に福岡大学が目指す姿について、衛藤学長に伺った。


 

「心」の教育を取り入れ「知」と「心」の二つを磨く

――節目の年を迎え、今後、どのような人材を輩出したいとお考えですか。
衛藤学長(以下敬称略) 「知」と「心」をバランスよく学ぶことのできる人材が、私の描く福岡大生の人材像です。心の力が基盤としてあり、その上に知力が備わっている、一言でいうならば「バランスのとれた、明るくて気持ちのよい人間」といえるでしょう。

「心」といってもいろいろな解釈が可能です。倫理観がしっかりしている、正義感が強い、道理を重んじる、バランス感覚に優れている、柔軟性があるなど、「心の力」も様々です。福岡大生には、その中の一つでも二つでも、しっかりと兼ね備えた人物になってもらいたいと思っています。

「知」を学ぶとは、教養や専門知識を幅広く得ることであり、同時に論理的な思考力や総合的な判断力、豊かな表現力を身につけることです。「心」を学ぶとは、さきほどのように礼儀・マナー、倫理、良識、正義、包容力などを身につけることです。この「知」と「心」の両方を身につけてこそ、人は一回りも二回りも大きく成長できるのです。

ですから、教養科目のカリキュラムにも、「心」の科目群が必要ではないかと考えています。教養科目には、哲学や宗教といった科目がありますが、心や精神を磨くための科目があるべきではないかと考えています。例えば、教養科目の中に、礼儀やマナー、モラルを学ぶ授業があってもいい。

特に最近は、市場経済の歪みが露呈し、マネーゲーム的発想や利益至上主義の横行、そして偽装や改竄等の不祥事が起きるのは、知識を備えていても、人としての心がしっかり備わっていないからです。心の力という基礎がしっかりしていれば、様々な誘惑をはねのけることができるはずです。

大学の教員にとって、「心」は専門外という見方もあるかもしれません。しかし、だからこそ、あえて大学で「心」の教育をする価値があるのではないかと私は考えています。
そうして「知」と「心」の両方を磨いた学生は、多くの人の心を引きつける社会人へと成長することでしょう。

地域貢献と国際化の拠点を目指すマグネット・ユニバーシティ構想

――福岡大学は、「磁石のように人を引きつける」の意味を込めた「マグネット・ユニバーシティ」を掲げていますが、どのような構想でしょうか。

衛藤 福岡大学の知の拠点としての重要性と地域への影響力や貢献をさらに高め、国際性に富みグローバル社会をリードする総合大学としての魅力に磨きをかけるという構想です。福岡大学は今年、創立75周年を迎えます。本学は九州で最大規模の総合大学として、また本学が立地する七隈ゾーンのシンボル的存在として、地域の発展にますます大きな役割を担っていかなければなりません。

知的拠点としての福岡大学は、教育・研究・医療の三大高度機能が集積する、地域社会に開かれた交流拠点でもあります。それゆえに、福岡のシンボル的拠点といってもいいと思います。地域との関わり方では、地域社会の将来を担い、地域の発展に寄与する人材を育成・輩出する使命や、地域の方々に生涯教育や交流の場を提供する役割、そして高度な地域医療を提供し続けるミッションなどを、本学は担っています。

福岡大学が担うべきこうした使命を今後も果たしながら、さらに力強く邁進すべく、地域に愛され、地域の人々を引きつける大学へと発展させていく構想が、この「マグネット・ユニバーシティ」です。

「マグネット・ユニバーシティ」の取り組みとしては、小・中・高校生から社会人、地域住民、同窓生まで多様な人々の成長に貢献できる、裾野の広い教育プログラムを整備し、福岡大学を地域の一大教養センターへと発展させるよう取り組んでいます。また、地域住民の健康と医療に貢献する体制づくりも検討したいところです。本学は福岡大学病院と福岡大学筑紫病院の二つの病院を有しています。

二つの病院に加えて医学部、薬学部、スポーツ科学部をそろえているのも本学の大きな特長です。健康と医療の分野における地域貢献は、本学がこれからも果たすべき重要で必須の使命と心得ています。

地元企業との産学連携も推進しています。昨年1月には、福岡銀行と協定を締結しました。福岡大学が持つ研究成果、そして技術・ノウハウなどのシーズや知的財産と、福岡銀行の幅広い顧客ネットワークや金融やベンチャー育成のノウハウを持ち寄り、地域産業の発展や学術の振興、地域の未来を担う人材育成などを進めていきます。

「マグネット」の及ぶ範囲は福岡・九州にとどまりません。アジアの玄関口に立地する総合大学として、地域性と国際性の共存を図りたいと考えています。福岡という土地は、アジアとのアクセスが極めてよく、関東・中部・関西と比べても、アジア方面に対して地勢的優位性があります。
そのメリットを活かし、アジアからの留学生の受け入れを増やしていく予定です。

韓国と中国、それからベトナムやマレーシア、さらにモンゴルなどの中央アジア諸国まで範囲を広げ、将来のアジア諸国のリーダー育成に貢献したいと考えています。そのために、留学生のための基金を創設する案も出ています。裕福でなく、留学費用を負担できない優秀な外国人留学生に対して、返還の必要のない財政的支援を行うというものです。

今年3月には、福岡大学の産学官連携センターと、韓国釜山広域市の釜山テクノパークとの間で、環境分野におけるMOU(覚書)を締結しました。今後3年間にわたり、二カ国間で科学技術の情報交換、共同事業、技術移転のための情報交換などを進めていきます。こうした取り組みで、福岡大学の教育・研究・医療の質を高め、ブランド価値の向上にもつなげたいと考えています。

「責任ある教育」のために大学の安定と発展が必要

――経済の低迷で地方の活気が失われつつあります。福岡の拠点大学として、地域と大学の発展のためにどのような対応をお考えでしょうか。
衛藤 少子化の流れに不況の波が重なり、九州では定員割れを起こす大学も出てきています。規制緩和で大学の数が増えてから、競争が激しくなり、現在の大学の経営状況の厳しさは、目を背けられない現実です。加えて、認証評価の義務化や内部監査の実施、事業計画と事業報告書作成の義務化など、大学の質の向上も厳しく求められています。

この質の保証は、日本の高等教育において必要なことです。なぜなら、大学には「責任ある教育」を行う使命があるからです。「心」の教育といった根底部分の教育は、確かに地道で目立たないものです。地味でも注目されなくても、必要な教育をする使命を大学は負っていますから、質の保証への対応は、高等教育全体にとってよい流れだと感じています。

連携の分野では、「中高大連携」を強化していきます。福岡大学には、附属の大濠中学・大濠高校があり、男子校として一貫してきましたが、このたびの理事会で、女子も受け入れる方針に決定しました。こうした附属化・系列化を含め、中高大連携を戦略的に展開していきたいと考えています。

しかし、高等教育サービスにより、地域と国の発展に役立つという意味では、高等教育サービスはメリット・グッズ的要素を含みます。高等教育サービスは、受けた本人のみならず、社会と国にメリットを与えます。ですから、高等教育サービスを提供する大学に対して、国が補助政策を実施したり、補助金を支給したりしているのです。

国の補助政策として、特色ある取り組みをしている大学やプログラムを厚く補助するインセンティブ補助が推進されていますが、それとともに、大学が基本的な「責任ある教育」を遂行している限り、広く公平なエッセンシャル補助が一層推進されることを望んでいます。本学も現在、政府から多額の補助を受けており、ありがたく思っております。

あらゆる産業は、安定的な基盤があってこそ、持続的な成長・発展が可能だと思います。現在のように経済が低迷すると、安定がいかに重要か分かります。企業の倒産件数は戦後最大規模です。職を失うことにより、様々な機会を奪われる人々も出ています。社会と人々の生活にとって、安定的な基盤は非常に重要なものです。

安定と発展の重要性は、大学においても同じです。地域の大学の安定は、将来の発展の基盤となるとともに、地域の発展性と密接に関わってきます。大学に安定的な基盤があってこそ、地域に貢献する活動ができます。「責任ある教育」を行い、地域の将来を見据えて、人材育成を継続していくことができます。そして、地域と大学がともに発展していくことができるのです。

環境の分野では、「サスティナビリティ(持続可能性)」という言葉が使われています。経営の分野では最近、「生き残る力」を意味する「サバイバビリティ」という言葉さえ使われているようです。競争が成長・発展を促すという側面は確かにあります。しかし、行き過ぎた市場原理と過剰な競争で、安定的基盤と持続可能性が失われるのなら、それは大きな問題です。

福岡大学の目指す姿を考えるとき、私は一本の大きな木をイメージします。木の幹の一番高いところに建学の精神と教育研究の理念があり、その下に、教育・研究・医療の三機能、さらにその下に、第三の機能としての社会貢献活動があります。教育の幹から伸びる枝葉には、例えば、教養教育の見直し・充実、留学生受け入れの推進などが、社会貢献活動の幹の枝葉には、産学官連携やコミュニティ連携の推進などがあります。幹と枝葉を支える根の部分は、入学者であり、その保護者であり、また国の高等教育政策や補助金です。しっかりとした根が張っていてこそ、福岡大学の幹と枝葉を成長させていくことができます。

根をしっかりと張っていくために最も必要なものとは何でしょうか。一言でいうと、「責任ある教育」であり、「教育の質」です。質を保証しながら責任ある教育を進めることと、その教育を信頼して多くの入学者が集まること、そして福岡大学と地域がともに安定的に成長・発展していくことが必要です。まさに学生・大学・地域が三位一体となった成長・発展を遂げなければなりません。今後も、福岡の地域拠点としての期待を背負い、「責任ある教育」を展開しながら、教育の質の向上に努めたいと考えています。

衛藤 卓也 Takuya Eto

1945年生まれ。神戸大学大学院経営学研究科博士課程修了。英国リーズ大学交通研究所留学を経て、福岡大学商学部教授に就任。商学部長、エクステンションセンター長、副学長を歴任し、2007年より現職。日本交通学会理事、公益事業学会理事、日本海運経済学会評議員。著書に『交通経済論の展開』(千倉書房)などがある。

大学改革提言誌「Nasic Release」第19号
記事の内容は第19号(2009年6月1日発行)を抜粋したものです。

 

ナジックリリース第19号・記事一覧

日本の将来を切り開き、新しい価値基準を創造できる自立性の高い人材を養成 (名古屋大学 総長 濱口道成)


学生、教職員、卒業生が三位一体となりグローバル化と地域貢献で使命を果たす (千葉大学 学長 齋藤 康)


「夢」を原動力に世界と地域に貢献する「グローバル・エクセレンス」の実現に挑む (神戸大学 学長  福田秀樹)


社会のあるべき姿を追求する「自立型人材」の育成が法政大学の使命 (法政大学 総長・理事長 増田壽男)


世界屈指の規模を誇りながら、きめ細かい双方向教育を通じて国際社会のオンリーワン大学を目指す (日本大学 総長 酒井健夫)


「責任ある教育」の推進が地域と世界に貢献するマグネット・ユニバーシティを実現する (福岡大学 学長 衛藤卓也)


学生のための改革で、教育責任と質の保証を果たすことが知識基盤社会構築を担う大学の役割 (独立行政法人大学評価・学位授与機構教授  文部科学省中央教育審議会委員 荻上紘一)


「戦略的大学連携支援事業」で特色ある大学づくりをさらに加速 (文部科学省 高等教育局 大学振興課長 義本博司)


5女子大学共同教職大学院運営モデルの構築 (学校法人日本女子大学 常務理事 若林 元)


ポーアイ4大学による連携事業 安全・安心・健康のための総合プログラムを軸として (ポーアイ4大学連携推進センター コーディネーター  田中綾子)


社会人基礎力とは何か(後編) 未来を担う若者をいかに社会全体で育てていくか (法政大学大学院 政策創造研究科教授 諏訪康雄)